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カテゴリー「鉛筆デッサン」の1件の記事

2012年4月11日 (水)

キンゴジ原型 そしてフィギュア制作における「良い嘘」「悪い嘘」

ブログの更新方法を忘れてしまうくらいごぶさたしております。

相変わらず本業のDTP稼業が忙しく、共働きの我が家では家事も分担制の為、
休日の限られた時間で、4年に一度やってくるオリンピック並みのペースで造型を続けています。

もう少し自由になる時間やお金があれば、造型もラクに…とは思いますが、
無いものねだりをしてもしかたないので、
「工房付きマイホーム」、「可愛い妻」、「癒しの飼い猫」、「少ないながらも毎月ちゃんと給料が振り込まれる定職」がある事に感謝してマイペースで造型を続けていこうと思います。

ペースはまったりですが造形への情熱とこだわりは失っておりませんのでご安心ください。

では久しぶりの更新なので、今回は冗談は控えめに造型に関するウンチクなどを書いてみたいと思います。

まずは製作途中のキンゴジです。
Kingoji1

Kingoji2



自分はいきなり正解を作れる天才肌の原型師ではないのですが、
自分の作ったものが「なんか(どこか)おかしい?」はわかるので、
このキンゴジも、かなり前から制作は開始していましたが、
ブログにUPして皆様にお見せするには納得がいかず、
昨日作ったものを、今日ぶち壊すという非生産的な作業が続いていました(苦笑)

でも新作を心待ちにしていただいているお客様にご安心いただきたいのは、
それが辛いからといって、巷で流行りのオリジナルイメージの「俺ゴジラ」に逃げたりはしません。
オリジナルイメージによる造型は否定はしませんし、あってもいいとは思いますし、自分好みのアレンジなら買っちゃう事もあります。

でも自分が作る時にはアレンジ造形はあまり興味は無いです。
自分はデビュー以降ずっと、原型師はアーティストではなく職人だというスタイルを徹底してモノ作りに取り組んできました。

自分流のアレンジはもしかしたら、ごく一部の人たちに好評かもしれませんし、
作ってる最中も、自分の欲望を作品に反映させられるので実に楽しい作業だと思います。

でも映画の中から抜け出してきたようなフィギュアを求める大半のお客様にとって、
作ってる人間の個性などというのは何の価値のないものだと思っていますし、
もしそういう造形が好きな方は多分、私の作風には興味が無く、
フィギュアを買ってくださる事も無いかと思います。

自分が幼い頃ブラウン管やスクリーンで観た怪獣を、
鏡で映すように作るためには、(鏡は左右逆に映るのでこのたとえは変ですが…)
自分の個性は邪魔者以外の何者でもないので、
そういう要素は徹底的に排除しなければなりません。

と言いつつも、実際は邪念が邪魔をして中々できないのですが…笑

振り返れば高校生時代、芸大に入る為に、夜間美術の予備校に通い毎日デッサンをしていた時期がありました。
あのキュビズムの創始者のピカソですら、少年時代は写実的なしっかりとしたデッサンを描いていたのだから、将来どんな作品を作るにしても基本はしっかり学ばなければと、
ひたすら毎日描き続けました。
おかげで芸大に入学した時には絵を描く事は嫌いになっていましたが 笑

お恥ずかしながら18歳の当時の私の鉛筆デッサンの一部です。↓

Photo_10


Photo_7



Photo_8


Photo_11

絵を描く事は嫌いになっちまいましたが、デッサンを描く過程で、私は以後のフィギュア作りにおいて最も大事な事を学びました。
それは…

「自分の目で見て理解したつもりでいるモチーフは、実は自分の主観や、いろんなエゴによって歪められている」

という事。
人間は無意識に目で見たモノを自分に都合のいいように解釈します。
だから目の前のモチーフを100%理解し受け入れるには自分を否定しないと無理なんですよね。
自分が今描いたこの直線は、本当に直線でいいのか?
本当は曲線なんじゃないか?とか、
ここは白く見えるけど、本当に白なのか?
本当は薄いグレーなんじゃないか?とか、
そんな風に常に自分の目を疑って、否定して見た(つもりでいる)モチーフを、何度も色んな視点から、しっかり検証していく事を学びました。

でも実物に忠実に作るだけなら、着ぐるみを3Dスキャンしたらいいじゃないか?
という話になるのですが、実は機械的なスキャンでは全然実物に似ないのです。
実際の役者さんや、映画撮影用のプロップをコンピューターでスキャンし製作されたフィギュアも近年作られておりますが、
なぜか全然似ていないのに驚いた人も多いでしょう。
ここがフィギュアの不思議なところなのですが、オリジナルを機械的に縮小すれば、
その複製品はオリジナルが持っている気迫と言いますか何と言いますか、
たとえが難しいのですが、明らかにオリジナルに劣るフィギュアになってしまうのです。
オリジナルが100%だとすれば、コピーする人の技術や設備によって、
その劣化が90%の時もあれば70%になるときもあります。
でもどうやっても100%になる事はありません。

それを補うために我々原型師は、噓は噓でも「良い噓」をつきます。

この「良い噓」というのは、
腕のいい似顔絵画家や、写実的な造型で有名な原型師の方々は心得ておられるみたいです。
※具体的にお名前を掲載すると、いろいろ問題がでそうなので止めときますが…。

たとえば、
実際に資料と見比べると、
そこのシワはそんなに深く無いし、
そこにそんな出っ張りは無いし、
そこのウロコはそんなにデカくない…

でも資料と見比べるまでは、
まさかそこが噓だとは思わなかった(ここ重要)

でもこのサイズのフィギュアでは、むしろこのアレンジのほうがより実物の印象に近いと感じさせるような部分は「よい嘘」です。

噓をついたほうが、噓をついていないものより真実に近く見える…不思議ですね。

まだまだコンピューターに職人が負けない領域です。

だから自分も、「自分の個性を押し付ける為の噓」はつきませんが、「本物に近づける為の噓」はつきます。
でもそれは、ありありと分かるような噓じゃありません(すぐにそこが噓だとバレたならそれはフィギュアにとって悪い噓なので…)

もし皆様の手元に私の作品があればそういう所を気にして観ていただければ、より一層楽しめると思います。

そしてそんな「良い嘘」をつきながら「悪い嘘」をつかないようにキンゴジを作っていきます。完成を楽しみにしていてください。