フィギュア原型ができるまで…
フィギュアは伝統工芸と違って、歴史が浅いものなので、これが正解というのはありません。
ここで紹介する方法も 、私独自の方法で、イワクラの後輩原型師たちに教えている方法なので、星の数ほどあるフィギュア製 作方法の一つだと思ってご覧ください。(^^)
○まずはスケッチ。原型師といえば、誰もがこれをやってそうですが、実は私も含めて部下もこんな事はやっておりません(^^;)絵を描くとそこでイメージが固まってしまうので、打ち合わせに必要な場合などを除いて描くことは無いです。
○人間であれ着ぐるみ怪獣であれ、人間が演じているキャラクターの場合は、まず人間を作ります。
最終的には粘土で埋まってしまうので、無意味な作業に思われますが、ここをしっかりやっておかないと、後々フォルムが破綻してきます。
もちろん解剖学本に載っているような人間は、西洋体型なので、実際に役を演じた役者さんの体型を作ります。
○次は粘土をかぶせて衣装を形作っていきます。怪獣とかの場合は着ぐるみの表皮を作ります。
この時に大事な事は資料をしっかり見る事です。手に入る値段の資料はすべて集めます。ここで資料収集に手を抜いて、イマジネーションに頼ってしまうと、映画のキャラクターの再現ではなく、自分流のキャラクターになってしまいます。
作者の個性を否定しているように見えますが、たとえ資料に忠実に作っていても、必ず作者の個性は出ます。ですからイマジネーションに逃げ込まず、徹底して映画に登場したキャラクターを忠実に再現するように部下にも指導しています。
○古い映画のキャラクターの場合などは、まれに背面の写真がまったく存在しないものもあります。このキャラクターもそうでした。
そういう場合は最終手段として、現存する最も近い衣装などからディティールをパクります。モデルに似た衣装を着せてポーズをとらせるのが最適ですが、フィギュアを一体作るのにモデルを雇っていては赤字になってしまうので、友人や身内に頼むか、ファッション雑誌などを参考に造形します。
同じポーズでも服(着ぐるみ)の素材や厚みによって、シワの入り方も変わってきます。資料を観て造形した部分と想像で補った部分を違和感の無いように気をつけて仕上げていきます。
○人形は顔が命!!資料とフィギュアを見比べながら、自我を殺して作業するのは精神力を消費します。モチベーションの量は限られていますので、私の場合は全体のフォルムを作った後は顔の仕上げから入ります。
ですがここでは実験的に顔を最後にしてみました。
やはりモチベーション切れが近いのでしんどかったです(^^;)
…という事で身長7センチの「妖怪大戦争」の般若が完成しました。これは5年前にユージン様の依頼で製作したフィギュアですが、商品化の予定などはございませんのでイワクラへのお問い合わせなどはご遠慮いただきますよう宜しくお願い申し上げます。
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